Type of Manuscript : Minireview
Title : Protein homeostasis disruption in cisplatin-induced skeletal muscle atrophy: toxicological insights from experimental studies
Authors : Hiroyasu Sakai, Risako Kon, Nobutomo Ikarashi, Kumiko Ogawa
https://www.jstage.jst.go.jp/article/jts/51/7/51_379/_article/-char/en
本研究室がこれまで取り組んできた基礎研究の成果をもとに、抗がん薬シスプラチンによる骨格筋萎縮のメカニズムをまとめたミニレビューが The Journal of Toxicological Sciences に採択されました。
シスプラチンは、肺がん、卵巣がん、頭頸部がんをはじめとする多くの固形がんの治療に用いられる重要な抗がん剤であり、現在も多くの標準治療レジメンに組み込まれています。その高い抗腫瘍効果から世界中で広く使用されており、多くのがん患者に投与されていることから、その有効性と安全性の両面で臨床的に極めて重要な薬物です。
これまで治療中の筋肉の減少は、食欲低下や体重減少といった間接的な要因によるものと考えられてきました。しかし本レビューでは、基礎研究の積み重ねにより、シスプラチンが骨格筋を直接傷害するという新たな概念を紹介しています。具体的なメカニズムとしては、タンパク質を分解する「ユビキチン・プロテアソーム系」の過剰な活性化、筋肉の成長を促す「タンパク質同化経路」の抑制、そして細胞内のストレス応答である「小胞体(ER)ストレス」が複合的に関与し、筋タンパク質の恒常性が破綻することが明らかになっています。また、これらのメカニズムをターゲットとした運動療法や栄養介入の可能性についても議論しており、将来的な支持療法の開発につながる視点を提供しています。骨格筋はシスプラチン毒性の重要な標的臓器であるという認識を広め、がん患者さんの QOL 向上と予後改善に貢献できる研究を今後も続けてまいります。
