DNAメチル化を正確に解析することで、がんの本体を解明したり、正確な診断を行ったりすることができる。DNAメチル化を解析する方法は大きく分けて二通りあり、一つは個別の遺伝子領域を解析する方法、もう一つはゲノム網羅的な解析法である。
我々はゲノム網羅的なDNAメチル化異常の解析法において先駆的な役割を果たしたてきた。1997年にmethylation-sensitive representational difference analysis (MS-RDA)法を開発した(Ushijima et al., 1997,Ushijima and Yamashita, 2009)。その後、様々ながんに応用して数々のDNAメチル化異常を同定してきた(Takai et al., 2001,Kaneda et al., 2002,Miyamoto et al., 2003,Hagihara et al., 2004,Abe et al., 2005,Miyamoto et al., 2005,Furuta et al., 2006)。最近でも、今までのノウハウを活かして、DNAメチル化アレイを用いた解析に大きな改良を加えている(Iida et al., 2018)。
DNAメチル化状態そのものに加えて、DNAメチル化状態を変化させる要因の解析も重要である。そのための検出法の開発も行っている。
個別の遺伝子領域のDNAメチル化を解析する方法
個別の遺伝子領域を解析する方法には、バイサルファイトシークエンス法、メチル化特異的PCR(MSP)法、定量的MSP法、COBRA法、パイロシークエンス法などの方法があり、それぞれ解析範囲、感度、精度、必要な機器が大きく異なる。これらは全てバイサルファイト処理によってメチル化していないシトシンのみをウラシルに変換するという原理を利用している。
バイサルファイトシークエンス法は特定の領域内の個々のCpGのメチル化状態を知ることができるが、労力と時間がかかる。MSP法は簡便であり、全体の1/1000分子のみがメチル化していたとしても検出可能な感度があるため最も汎用されるが、定量はできない。定量的MSP法は1%以下から100%まで、広い範囲で定量可能であり、精度も高く、我々もよく活用している。COBRA法は制限酵素配列の制約があるが、簡便な定量法である。パイロシークエンス法は、解析機器、試薬が高価であるが、個々のCpGについて中程度の感度と高精度でメチル化定量が可能である。
参考文献
・エピジェネティクス実験スタンダード, 羊土社
・Hattori and Ushijima, 2018

ゲノム網羅的なDNAメチル化解析法
ゲノム網羅的なDNAメチル化解析法は、DNAメチル化の検出と、ゲノム網羅的スクリーニングの二段階になっている。DNAメチル化の検出には、抗メチル化シトシン抗体などとの結合性を利用する方法、メチル化感受性制限酵素を用いる方法、バイサルファイト処理による方法、DNA脱メチル化剤を用いて発現誘導する方法がある。ゲノム網羅的スクリーニングには、各種マイクロアレイ解析、次世代シークエンス法、二次元電気泳動法、サブトラクション法などがある。どの組み合わせを選ぶかによって、解像度、定量性、費用対効果、必要な機器が大きく異なる。
例えば、我々が現在用いているInfinium Methylation EPIC(Illumina社)は、バイサルファイトしたDNAを用いて、85万カ所以上のCpG部位のメチル化レベルを解析する方法である(Iida et al., 2018)。現時点では、網羅性、定量性、経済性をバランス良く兼ね備えているといえる。
詳細は、我々が編集した成書を参照頂きたい(エピジェネティクス実験スタンダード・羊土社)。
DNAメチル化に影響を与える化学物質を探索する方法の開発
ジェネティックな異常を引き起こす化学物質を変異原と呼ぶのに対し、エピジェネティックな異常を引き起こす化学物質をエピ変異原と呼ばれている。エピ変異原として、シチジン類似体、ヒ素やニッケル等の金属化合物、臨床で現在使われている抗てんかん剤のvalproateや抗不整脈剤のprocainamideなど、限られた物質が知られている。しかし、変異原と比較して、既知のエピ変異原の数は圧倒的に少なく、効率良い検出系がほとんどないことがその理由と考えられる。効率的なエピ変異原の検出系の開発は重要であり、これまでにそのプロトタイプを構築した(図)(Okochi-Takada et al., 2004)。また、ハイスループット検出系にて利用可能な、より高感度な検出系の開発を行った(Okochi-Takada et al., 2018)。本検出系を用いて、企業との共同研究により、DNAメチル化阻害剤(DNMT阻害剤)のスクリーニングを行っている。
