
@ 13C NMRより、明らかにベースラインから突出しているシグナルのケミカルシフトを読み取る。
(小数点以下第2位を四捨五入)

77 ppmにある3本は測定溶媒(重クロロホルム)由来のものなので無視する。
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A HMQCを解読し、各炭素原子に結合しているプロトンの重心のケミカルシフトを付け加える。(小数点以下第3位を四捨五入)
HMQCで、炭素原子に結合しているプロトンが見つからなかった場合は、四級炭素の可能性がある。



B COSYを解析し、炭素原子間の結合を書く。

たとえば、3.39 ppmのプロトンと1.95 ppmのプロトンにCOSYの相関が見られた場合は、それぞれのプロトンが結合している炭素原子(この場合は、71.5
ppmと45.0 ppmの炭素原子)が結合していることを示す。

C COSYの解析結果、上のような暫定構造を作る事ができたが、1.09 ppmと2.16
ppmのCOSY相関のような非常に微弱な相関を用いており、構造に確信が持てない。そのような場合は、HMBCを構造推定の補助に用いる。

0.79 ppmのメチルプロトンに注目してHMBC相関を解析してみる。このプロトンからは、21.0,
25.8, 50.1 ppmの3つの炭素原子へのHMBC相関が観測されている。HMBCは、基本的にはプロトンから3
bondの距離にある炭素原子への相関が観測される。25.8 ppmの炭素原子は今注目しているメチル基に直接結合しているメチンのもので、21.0
ppmの炭素原子はそのメチンに結合しているもう1つのメチル基のものである。結合価および、HMBC相関の3
bond縛りを考慮すると、残る50.1 ppmの炭素原子は、25.8 ppmのメチンに結合していることが明らかである。したがって、COSYの解析より得られた25.8と50.1
ppmの炭素原子の結合はHMBCの解析でも支持される。
3.39 ppmのプロトン、71.5 ppmの炭素原子からなるメチンは、そのケミカルシフト値より、
酸素原子と結合していると考えられる。(分子量も勘案すると水酸基)
以上より推定した構造を書き直すと下図のようになる。

Dつづいて、相対配置を帰属する。分子が小さかったら(分子量400程度?)考えられる立体構造を全て分子模型で作ってみる。今回の化合物は不斉炭素が3つあり、2位のイソプロピル基をS配置、且つ、エクアトリアル配向と仮定すると、下図のようにT〜Wの相対立体配置の可能性が考えられる。

T〜Wのいずれかの構造の中から、実際のサンプルのNOESY相関を満たすものを探す。

残念ながら有用なNOESY相関はほとんど観測されていない。がっかりだ。
本来ならば、Wの構造が正しく、1位(3.39 ppm)と5位(1.40 ppm)のプロトン間に1,3-diaxialのNOESY相関が欲しかったのだが。
Eそこで次に各プロトンの結合定数を解析することにする。ここでは特に、1位(3.39
ppm)、2位(1.09 ppm)、4位(0.83 ppm)の3つのプロトンについて見ていく。

1位のプロトンはaxialプロトンに典型的なddd(大2小1)の割れ方。
大きい結合定数は(3.3905-3.3733) X 600 = 10.32より、10.3 Hz(小数点以下第2位を四捨五入)
小さい結合定数は(3.3905-3.3836) X 600 = 4.14より、4.1 Hz
論文では
3.39 (1H, ddd, 10.3, 10.3, 4.1)と表記する。
2位のプロトンはaxialプロトンに典型的なdddd(大2小2)の割れ方。
大きい結合定数1は(1.0947-1.0735) X 600 = 12.71より、12.7 Hz
大きい結合定数2は(1.1113-1.0947) X 600 = 9.96より、10.0 Hz
小さい結合定数は(1.1165-1.1062) X 600÷2 = 3.09より、3.1 Hz
論文では
1.09 (1H, dddd, 12.7, 10.0, 3.1, 3.1)と表記する。
4位のプロトンは、1H NMRにおいては6重線が観測されるが(右上図))、HMQCや、COSYのクロスピークの形状を考慮すると、
上図(右下)のように8重線のピークと考えられる。これはaxialプロトンに典型的なdddd(大3小1)の割れ方。
大きい結合定数は(0.8592-0.8179) X 600÷2 = 12.39より、12.4 Hz
小さい結合定数は(0.8592-0.8534) X 600÷2 = 3.48より、3.5 Hz
論文では
0.83 (1H, dddd, 12.4, 12.4, 12.4, 3.5)と表記する。
(多くの場合、1H NMRで観測されるメチンとメチレンのピークシグナルを遠目で見たとき、下図のAやBのようなシングレット、ダブレット型であるならば、そのプロトンはequatorialである。また、CやDのようなトリプレット、カルテット型であるならば、そのプロトンはaxialである。)

(結合定数大=およそ10 Hz 以上、結合定数小=およそ4 Hz 以下)
F予想される構造と、各プロトンの分裂様式を考える。
2つのgeminalプロトンの結合定数は大
2つのvicinalプロトン(axial-axial)の結合定数は大
2つのvicinalプロトン(axial-equatorial)の結合定数は小
2つのvicinalプロトン(equatorial-equatorial)の結合定数は小
これは重要。
上記の原則を踏まえると、Tの場合、1位、2位、4位axialのプロトンはどのような分裂様式を示すか考えてみる。

1位のプロトンはequatorialであるので、vicinal位の3つのプロトンとは全て小さな結合定数を有する。
2位のプロトンはaxialであり、vicinal位の4つのプロトンとは、大1小3の結合定数を有する。
4位axialプロトンはgeminalの結合定数(大1)、およびvicinal位の3つのプロトンとは、大1小2の結合定数を有する。
次に、Tの構造から予想される結合様式と、実測の結合様式との矛盾点の有無を考察する。
すると、Tの構造では、矛盾だらけであることがわかる。
1位 実測(大2小1) に対して 予想(小3)
2位 実測(大2小2) に対して 予想(大1小3)
4位axial 実測(大3小1) に対して 予想(大2小2)
残るU〜Wの予想構造についても同様に検討すれば、正しい構造に行き着くであろう。