研究内容
薬品製造化学教室では、世界で活躍できる創薬化学研究者の育成を第一に掲げ、天然有機化合物の全合成研究と創薬化学研究に取り組んでいます。
天然有機化合物の全合成
多くの製薬企業における創薬化学研究者の採用には、複雑な構造をもつ天然物の合成研究の経験が重要な要件となることから、当研究室では有機合成化学の知識、合成技術を修練する場として、天然物の全合成研究を行っています。合成標的には、可能な限り創薬リードとして適した構造をもつ天然物や、生命現象の解明および新たな創薬理論構築のために有用な天然物を選んでいます。単に合成するだけではなく、確立した合成法を使って類縁体を合成し、創薬化学研究、ケミカルバイオロジーへと展開することを目指しています。
タンパク質間相互作用について
当研究室では、小分子化合物を用いた、タンパク質間相互作用の制御法についての研究に取り組んでいます。次世代の創薬の中心になると考えられる、タンパク質間相互作用制御のための一般的な手法を見出すことができれば、生体内で繰り広げられる情報伝達をコントロールすることができ、すなわち、新たな医薬品の開発につながります。
難病治療薬の開発を目指す
製薬企業の創薬においては利益を優先させるため、必ずしも必要な薬が作られるわけではありません。厚生労働省により難治性疾患克服研究事業の対象として130の疾患が指定されていますが、治療薬の開発はこれからの課題となっています。教育と研究を使命とするアカデミアが取り組むべき創薬研究としては、第一に、これらの難病を治療する薬剤を目指した創薬化学研究が挙げられるでしょう。
1.天然有機化合物の全合成研究
最近、当研究室で合成の報告をした天然物や化合物を以下に示します。少しの化学変換によって創薬リードとなることが期待できる化合物です。開発した合成経路は概ね短工程、高収率ですので、誘導体合成に利用できます。今後、誘導体や構造を簡略化した化合物等を合成し、機能解析を行います。
2.創薬化学研究
PCSK9はLDL受容体の分解を促進するタンパク質です。PCSK9とLDL受容体の結合(タンパク質間相互作用)を阻害する抗体医薬が開発されましたが、小分子の開発は達成されていません。当研究室では、PCSK9とLDL受容体の結合を、小分子化合物を用いて阻害する方法の研究を行っています。
3.ケミカルバイオロジー
生命現象解明のためのバイオロジカルツールのデザインと創製を行っています。さらに創薬へと展開できればと期待しています。