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研 究 内 容



〜糖尿病と合併症について〜


日本人のライフスタイルの変化(食生活の向上、運動不足など)などにより糖尿病は急増しています。例えば、糖尿病が強く疑われる人が 890万人、糖尿病を否定できない人を合わせると 2210万人であり、40歳以上の成人では 4人に 1人が糖尿病であるといわれています。

このように国民病化した糖尿病は 失明や尿毒症などの原因となるばかりでなく、脳梗塞や心筋梗塞を引き起こす原因になります。












〜血管障害について〜


糖尿病、高血圧症、脂質異常症、肥満、喫煙などによって生じる血管合併症のうち、人にとって最も重要な臓器である心臓や脳の血管の閉塞は、直接、人を死に至らせます。実際、平成 23年 1年間の死亡総数において、心疾患は 19万4926人で15.6%、脳血管疾患は 12万3867人で9.9%を占め、これらを合わせると死因の第 1位である悪性新生物(がん)とほぼ同じ死亡率となり、血管障害は、現代人にとって解明克服すべき病態であると考えます。また、血管と聞いて、酸素や栄養を送る血液が通っている「単純な管」のイメージを持たれる方が多いと思います。しかし実際は、血管内皮細胞や平滑筋細胞を始め、様々な細胞によって構成され、収縮弛緩を強めたり弱めたりすることにより、臓器組織への血流をコントロールしています。つまり血管は「第二の心臓」と言っても過言ではありません。この全身の臓器組織に血液を送っている血管の機能異常は、上述した様に心臓や脳だけではなく肝臓骨格筋などの様々な臓器機能障害や疾患を誘発することが明らかになりつつあります。

 

少し専門的な話ですが、血管は内膜、中膜、外膜の三層から構成されており、なかでも内膜(内皮細胞)は血管平滑筋の緊張の調節や血栓の防止などに重要な役割を果たしています。そしてこの血管の機能異常は、平滑筋の収縮弛緩機序の異常とそれを制御する内皮細胞の機能低下の相互作用により生じます。およそ20年間の当研究室の実験データから、これらの血管機能は種々内皮細胞障害因子・保護因子の異常、平滑筋細胞の異常によって障害されることを報告しました。

この詳細につきましては、非常に専門的かつ膨大なデータとなりますが、当研究室の研究業績(この論文番号は下記の図の数字です)と下記の図及び、前教授の鎌田勝雄先生が御執筆なされました糖尿病・脂質異常症に記述されていますのでご興味のある方は合わせてご覧ください。








~機能形態学研究室と血管機能~


当研究室が研究を始めた頃は、糖尿病時における内皮細胞機能低下に関する報告が皆無であったことを考えると、研究を進めてきた 20 年によって劇的に進歩しています。しかし、新規生理活性物質や様々なシグナル伝達、
全身の各部位における血管の性質の相違により、血管障害機序が複雑に絡み合うため、中心的原因物質や治療方法は見いだせていないのが現状です。
現在進めている研究は、上述したように、血管部位によって異なる性質、もとになる疾患の詳細な解析を行いつつ、血管部位・疾患ごとのシグナル伝達マップを作成し、中心的原因物質と局所的治療方法を特定できればと考えています。
また研究項目は以下のように分かれますが、すべての研究において共通しているのは、生活習慣病、血管機能測定と遺伝子・タンパク質の生理機能解明に基づいた新規治療方法の探索です。




1. 糖尿病病態(1型及び2型)、動脈硬化、高血圧モデルを用いた血管障害の解明と新規治療薬に関する研究
2. 新規糖尿病モデルの作成、糖尿病の発症機序とインスリンの生理機能に関する研究
3. 細小血管障害に起因した糖尿病性腎症、神経障害、網膜症における新規治療方法に関する研究
4. 血管内皮細胞由来のNO 産生や過分極因子における新規生理機能の解明
5. 脂肪細胞由来アディポサイトカインやインスリン受容体感受性に関する新規生理機能の解明と新規治療方法の探索
6. 種々の病態時及び臓器機能障害の血流制御による新規治療方法の探索











血管機能の測定について


機能形態学研究室において主要な実験技術である血管機能測定は、動物から直ちに血管だけを取り出し、血管が生きたままの状態で収縮・弛緩する力を測定する実験です。
この方法は、1998 年ノーベル医学・生理学賞を受賞されたFurchgott博士、Ignarro博士、Murad 博士等が用いた実験として非常に有名です。この実験により、内皮細胞による血管弛緩作用の存在を明らかにしました。







もっと詳しい「糖尿病・脂質代謝異常」と「機能形態学研究室内容」については、こちらの糖尿病 についても合わせてご覧ください。 前教授の鎌田勝雄先生が御執筆なされ「糖尿病、脂質異常症、血管障害、治療薬」について、基本的なことから専門的なことまでまとめられています。

一般的に糖尿病の治療における最終目標は、慢性合併症の発症および進展防止であります。糖尿病は、腎症、網膜症、神経障害等の他、脳梗塞、心筋梗塞などの合併症を誘発し、生涯に亘る生活の質を著しく損ないます。



例えば、腎不全による透析患者は、糖尿病患者が最も多く、また成人失明においても、その原因の第一位は、糖尿病性網膜症であります。更に、糖尿病患者における死亡原因の第1位は、心筋梗塞、脳梗塞などの大血管障害であると言われています。これらの糖尿病に起因する合併症に共通した病理学的特徴は血管障害(大血管障害細小血管障害)であります。血管の正常な機能が損なわれることによって、合併症が誘発される。つまり、糖尿病性合併症は血管の病変であると極論しても間違いありません。